俺には幽霊が見える。





同室の奴に言ったら鍛練で頭まで筋肉になったか、それとも睡眠を取らずにいたから
気が触れたか?と鼻で笑われるだろう。
いや機嫌が良くなければ寝言は寝て言え!くらいが妥当かもしれん。
それが立花仙蔵という男であると長年同室が故に悲しいことながら知っている。
だが生憎と俺の頭は正常だ。
幽霊と言っても俺が見えるのは一匹というか一人だけで気付けば居たという長い付き合いだったりする。
鍛練でボロボロになった日も委員会で徹夜の日もいつも幽霊はそこにいた。
















「もんじー、暇ぁー」

居ただけだった。

















女子であるというのに石の上に腰掛けて何処からかとりだしたものを食べている。
年柄年中だいえっとだ、減量だとなんだのと騒いでいるくせに俺がこいつを見る時は大抵寝てるか食べてる。
幽霊なら幽霊らしくふよふよ浮かんでいろと言ったらあれ疲れるから嫌だと言われた。
幽霊でも疲れるのか。
つい感心してしまったのは呆れたせいだ。
暇だというなら鍛練に付き合えと仮想敵役をいつも通り押し付ける。
幽霊相手に組み手は無理だが穴に落ちる事も怪我をすることもない素人はなかなかいない。

「いーよ、じゃあもんじが鬼!私を捕まえてみろ、このキモンジ!」

「おい、。そのキモンジってやめろ!」


ニッと悪そうな笑顔にぶち切れそうになる。
しかし最近は逃げ足が早くなったせいでなかなかつかまらない。
四年の綾部が掘る穴の見分け方も上手くなって誘導するから性質が悪い。

「鬼さんこちらー」


俺には幽霊が見える。
決して触れることができない幽霊はとても可愛い女の子だった。


















幽霊彼女。<11/02/02>