大好きな人と笑える国を
親が子どもを捨てずにいれる国を
自分を拾ってくれたあの人の手伝いを出来るように
夢を夢で終わらせないために
手伝おうかなんておこがましかったなと庭院先で様子を見ていたがどうも終わりになってしまったようだ。
翔琳のお陰で大分被害がこちら側にも出たみたいだがかすり傷程度だろうとちゃんと薬箱を用意してからは義父のいる室へと足を運んだ。
「失礼します」
中に入ればいつのまに来ていたのか黎深様までいた。
目を丸くしたに黎深はお邪魔してるよと笑った。
「私はお邪魔かな」
そう言って立ち上がろうとした黎深に鳳珠は少しだけ睨みつけたが出て行くことを引き止めるのも嫌なので放っていたのだが。
「鳳珠に愛想が付いたらいつでも来なさい」
にこりと笑う姿に必殺の視線が飛ぶが黎深がそのくらいでビクともするはずもない。
「ありがとうございます。お気持ちだけ頂かせて貰いますね」
鳳珠様が私に愛想を尽かす事があっても私はありませんのでと苦笑するの頭を撫でて黎深は少しだけ残念そうに退室したのだった。
「鳳珠義父様」
の瞳は真っ直ぐに鳳珠を射抜いていた。
その壮絶なまでの美貌のせいで彼を直視するもの、出来るものは少ない。
それでもは幼い頃から彼を真っ直ぐに見つめていたのだ。
「お願いがあります。私は・・・私の為に官吏になりたいと思います。我侭は十二分に承知してますが・・・女人の国試参加を認めてください」
真っ直ぐに願う心の強さを眼差しに込めたような視線に鳳珠は厳しい言葉を投げつけた。
「朝廷は綺麗な思いだけでは生き抜けない場所だ。時には不正に目を瞑り親や兄弟を騙してでも仕事をやらねばならない時がある」
その言葉は戸部の長となった男のものとしてとても重い言葉だった。
「お前は女だがそれで周りが甘やかしてくれるなど思ってはいけない。そしてお前は後の女人参加者の為に出世しなければならない」
わかっているのか、と問う鳳珠の眼差しも真剣だった。
「はい。私は官吏になります。なりたいんです―――どうしても」
拙い言葉だった。
もっと何か言えれば良いのにと思うほど言葉が出ない。
けれど約束出来るのは官吏になりたいと願う心。
なる為に努力し、叶えてみせるという思いだけ。
絶対に―――。
そして鳳珠はその言葉を聞きゆっくりと、ゆっくりとだがそれは綺麗に破顔した。
そしてその年の国試でたった二人の女人官吏が誕生した。
いろいろな意味で騒がれた国試だったが探花という称号と十代の若さでの合格を果たした少女達のことはかなりの反響を呼んだ。
それは遠く州をこえて。
茶州で噂を聞きつけた左頬に十字傷のある男は苦笑した。
「さすがと姫さん。予想以上のことしでかしてくれたなぁ。ちぇ、俺も報告しようと思ったのに、かすんじまうなー」
それはまだ願った夢のたった一歩目だったのだけど黄という少女の道が大きく切り開かれた出来事だった。