失恋したのはもう二年半も前の事。
ホグワーツへ来ることになったときに告白できないまま。
あれから彼には彼女が出来たって聞いた。
そのときが失恋決定的瞬間。
「まだ好きなのかな?」
なんて女々しいんだろうと呟くと後ろから声がした。
「誰をだい?」
優しげな声に振り向くと其処には闇の防衛術の教師が立っていた。
「ルーピン先生っ!!」
「君は・・だよね?お茶でもどうだい?」
こくりと頷く。
とんでもない所を聞かれた。
恥ずかしさで駆け出したい気分だったが優しい笑顔で誘われたら頷くしかない。
「じゃあエスコートさせてもらおうかな?」
にこりと笑いかけられて聞かれたのがこの人でよかったかもと思えた。
「その、こっちへ来る前に告白したかったんですけど出来なかったんです」
出してくれた紅茶とチョコレートと様々なお菓子たち。
カップを置くとぽつりと話し出した。
ずっと小学校のときから好きだったこと。
ホグワーツへ来る前に会えなかったこと。
そしてそのままだった恋の失恋となった彼の彼女が出来たこと。
「こんなに好きだとは思ってなかった。ホグワーツに来たら忘れると思ってました。
昔この人が好きだったなあって思えるかもって・・・・・・・・・」
溢れてくる涙が止まらない。
ぼやけた視界にルーピン先生の心配そうな苦しいような表情が見えた。
「。君は彼に会いに行くべきだよ」
そっと頭を撫でられて告げられた言葉は心の奥底に願っていたことだった。
「君は彼に言うべきだよ。思っている気持ちを。それが上手くいっても行かなくてもその事がきっと君が進む力になる」
差し出されたハンカチで涙を拭くといいこだともう一度撫でられた。
「先生、振られたら泣きに来ていいですか?」
覚悟は出来てた。
そんなにリーマスは待ってるからねと囁いた。
「どうして先生まで来るんですか!?」
日本へ日帰り予定でいたらついてきたルーピン先生。
「の付き添い。邪魔しないから」
ほらとダンブルドア校長の『出張許可証』を自慢げにかざすルーピン先生に思わず漏れた笑み。
ルーピンが眩しげな瞳で見ていることにはまだ気付かない。
「ここが私の生まれた街です」
都会でもなく田舎でもない。
肌寒さに秋も過ぎ始めている事を実感する。
「いいところだね」
はあと吐く息が白い。
にこりと微笑んだルーピンがの背を押した。
「いっておいで。私はこの辺で待ってるから」
そうだな、そこのカフェでも入ってるかな?
そう行ってくれる優しさに甘えた。
「行ってきます」
校門に足を踏み入れて行くの後姿をずっとルーピンは見つめていた。
「久しぶり」
「・・・・・・」
驚いた表情の彼ににこりと笑った。
「ちょっと用事があって帰ってきたんだ」
変わってないねと呟く。
そうだろ、この街はかわらないよなという言葉に苦笑する。
変わらないのは彼自身だというのに。
「ねえ。彼女とは・・・」
「いた!・・・・ごめん、邪魔して」
驚いたような表情でくるりと背を向けて走り去った少女に彼は慌てて呼び止めた。
止まるはずもなかったけど。
「悪い、俺行かなきゃ」
「ねえ!」
去って行く背中に叫んだ。
「私、好きだったよ!」
びっくりした表情で振り向かれて苦笑した。
「良い女を見逃してた!」
「全くねー」
手を挙げてありがとうと行ってくれた彼。
彼女を探しに行く彼の背中が遠ざかってく。
涙が流れたけどそれは自分を哀れむ涙じゃなくて前に進むための儀式。
「全く彼は見る目がないね」
背中にかかった言葉に驚いて視線を上げた。
「・・・・・・ルーピン先生」
「はこんなにいい女なのに」
ゆっくりと髪を撫でられて囁かれた。
「先生って意外と口が上手いね」
口下手と思ってたといえば苦笑が返ってくる。
「口下手だよ。一生懸命口説いてる」
僕にしときなよ、大事にする。
瞳に浮かんだ真摯な色に驚く。
失恋直後にこんなに真剣に告白されるとは思わなかった。
「悲しい時や心が弱っている時に決めちゃ失礼だから・・・」
視線を上げてにっこり笑って答えた。
「私が先生を好きになったら私から告白する」
「本当にはいい女だ」
ルーピンがと付き合うのはそれから半年後のことである。