私と彼の日曜日3

















日頃見かけないものを見ると、しかもそれが信じられないほどのものだと思考は凍結されてしまうらしい。













日頃地下にある教室と割り当ている私室に見回りの巡回以外ではあまり見かけるとこのない、いや見かけたくない教師ナンバー1。

その名誉ある?座についた男はこの世の終わりとも言えそうな表情をしていた。

隣にはいつもなら笑顔溢れる少女がこれまたこの世の終わりを三度見たような表情をしていた。

彼らはお互いの人差し指の先を触れるか触れないかで組み合わせている。

指先一本ですら触れたくないのにとお互いが毛嫌いしていることもあり歩く速度は競歩大会の様である。

「なんで私がアンタなんかとホグズミート回んなきゃいけないのよっ!!」

その暴言を耳に挟んだ生徒はひぃと悲鳴をあげた。

「教師に向かって口の聞き方に気をつけろ、ミス・。我輩とて貴様とこのような事をしたくてしているわけではない!!」

地獄から響くような低い声に周囲の温度は二℃くらい下がった気がする。

このような事態に陥ったのは訳がある。

はグリフィンドールの生徒だが入学してからすぐに一人の少女と仲良くなった。



大人しくて喋りやすい感じに好印象を持ってしまったのが仇となる。

仲良くなるにつれ彼女の大人しさは人見知りという薄い膜で覆われていたものだとわかり喋りやすい感じというのは単にマイペースなだけだったのだと悟った。

ここら辺で縁を切っておけばよかったとは事あるごとに思っている。

なんて言ってもある日突然

「好きな人が出来たの、!!」

と瞳を輝かせて告げたのだ。

様々な欠点を見つけて喧嘩もよくするけれどマイペースにもほどがある彼女に訪れた春。

応援しなければ自分にべったりだろうと思い相手の名を聞こうとしたのだが。

「は、恥ずかしいからまだ言えない」

そう言って珍しく頬を染めてる友人に自分もやっと楽になると思っていたのだ。

そして楽になるために言った一言がまずかった。

多分一生の中で一番くらいに失言だ。

「応援してあげるから相手の名前を教えてよ」

そう言ってやればもじもじとしていたはうつむきがちにいった。

「せ・・・セブルス・スネイプ先生・・・なの・・・」

「やめとけって!!」

応援するって言ったじゃないと言われても引けない。

引くことは出来ない。

いくら自分が楽になるとはいえその相手では応援はとても無理。

「私諦めないから。もちゃんと先生のことを知れば好きになるから」

「え、遠慮シマス」

あの親父でねっとり髪で厭味の粘着質タイプを好きになれるとは思わない。

しかし自分達はグリフィンドール生である。

スネイプはグリフィンドールは嫌いというか憎んでいるし生徒との恋愛なんて浮ついているタイプにはどんな乱視でも見えない。

そういうわけでラブラブにならないだろうと高をくくって生贄にと迫られるスネイプ教授を見ることを仕方なく娯楽の一つに加えたのだが気がついたことが一つ。

最近スネイプはに甘い気がする。

このまま落ちたら楽になんてならずにだけでなくこのいけ好かないスネイプまでがセットになって付いて来てしまうだろう。

恐怖のハッピーセットの完成だ。

・・・洒落にならん。

そしてつい昨夜入り浸ってる(入り浸らされてる?)スネイプ教授の執務室でが爆弾発言を落とした。

「ね、って誕生日でしょ?」

カレンダーを指差されて頷く。

「私、何がプレゼントにいいのか考えたんだよ?」

から貰う毎年のプレゼントはアクセサリーが多い。

ピアスはあけないと言ったので可愛らしいイヤリングが毎年増えているのだが。

「今年はね、私が貰ったら嬉しいものにしてみました!!」

えっへんと擬音が付きそうな胸の張り方に苦笑する。

「で、何をくれるの?」

「あのね、スネイプ先生!」

ゴフッ

吐血でもしたような音がして見たら珈琲を盛大に吹き出してるスネイプの姿。

「いやぁ・・・それはいらないんだけど」

むしろゴミ収集も引き取ってくれないから困ると言い掛ける。

「スネイプ先生、火傷しませんでした?タオルどうぞ」

こんなに溢してとくすくす笑っているは聞いちゃいねえ!!

「心配しなくてもスネイプ先生を全部はいくら親友のでもあげれませんから安心してくださいね」

にっこりと笑っているを見るスネイプの視線は

『我輩がいつお前のものになった!!』

と言っているが口に出さないだけ奴も学んだというところか。

そんなこと言った日には多分お婿に行けない身体にされるだろう・・・想像してしまって全くもって気分が悪い。

「でね、考えたんだけど明日はお休みだしと先生で手を繋いでホグズミートでお買い物はどうかなーと思って」

「いや、それは・・・・」

嫌だと言う前にはスネイプを向いている。

「前にゲームに私が勝った時のまだありますよね?もし嫌でしたら私と一日寝室デートでも全く構わないですけど」

ぶんぶんぶんっ

蜂も首も飛んでしまいそうなほど必死で首振り人形と化したスネイプに使えない奴と内心で舌打ちする。

?私、明日は用事が・・・」

に先生の魅力がきっと明日わかってもらえるわ」

の後ろで頷かないと死の呪文を唱えそうなスネイプ発見。

奴の貞操を守るためになんで私が犠牲にならなきゃいけないのだろう?

「罰ゲームより酷くない?」

プレゼントにならないよと言いたくともはいいなあ先生とデート・・なんて言っている。

苦行はさっさと終わらすに限る。

二人はホグズミートに付いた途端指を一本だけ絡ませて競歩のごとく回りだした。
























「おい、あと回るのは何処だ!?」

少しだけ息の上がったスネイプ先生に近距離で怒鳴られて耳が痛い。

「三本の箒でバタービールで終わりですよっ!ていうか煩いから怒鳴るな!!」

「・・・チッ・・・何故我輩がこんなことを」

歩幅も緩めずに歩くスネイプにぴったりとくっついていく。

「それは私の台詞ですよ。大体最近絆されてんじゃないですか?落ちるならさっさと落ちて私に楽をさせてください」

「馬鹿をいうなっ!あれはそういう罰だったのだっ!!大体お前は親友なのだろう!?をどうにかしろ!!」

「親友というより向こうがくっついて来る腐れ縁です。どうにかできるならとっくにしてます」

はあああ

同時に落ちる溜息が嫌だ。

看板が見えた。

「「バタービール一杯!!」」

扉を開けて同時に注文した私とスネイプは一気飲み大会よろしくゴキュゴキュとバタービールを飲み干し料金を叩きつけるように置いて店を出た。




















「で、。スネイプ先生の良さはわかった?」

「ちっとも。もうあんな誕生日プレゼントはいらないから」

胸元にはからもらった幸運のお守りというクローバーの入ったペンダント。

「変よね。スネイプ先生も同じこというのよ」

の言葉に溜息を付きつつこの友人・・・いや親友の恋が実るかどうか近くで見るのも巻き込まれない程度ならいいかなと魔がさして思ってしまったのだった。